今では当たり前となった「ソープランド」という呼び名ですが、かつては「トルコ風呂」という名で親しまれていたことをご存知でしょうか?1960年代から1980年頃まで、日本では性風俗店の総称として「トルコ風呂」、または略して「トルコ」と呼ばれていました。
■本来の『トルコ風呂』
その昔、イスラム教を信仰する中東地域では、「温める」を意味するアラビア語の「ハンマ」に由来する「ハンマーム」という公衆浴場が存在していました。
そこでは男女が別々に入浴をし、男性客には男性の垢すり師、女性客には女性の垢すり師がつくという、現代でいえば、銭湯とエステが一緒になったような施設でした。
イスラム教では、女性は親族以外の男性に、頭を含めた体を隠す習慣がありますが、ハンマームでは、そんな女性たちが、唯一素顔をさらして開放的になれる社交場で、その様子は、ヨーロッパの画家の作品にも描かれています。
そんな作品の影響からか、西ヨーロッパ地域の人々の間では、そんな「ハンマーム」に裸で集う女性の姿は、とても神秘的で、エロティックだという考えが広まったようで、17~18世紀頃のロンドンでは、「トルコ」式の浴場が建てられていましたが、そこでは、”性的なサービス“が行われていたようです。
■日本の『トルコ風呂』
1960年代になり、日本にもアメリカから「ターキッシュ・バス」の名で「トルコ風呂」が伝わってきましたが、洗体やマッサージというサービスのイメージから、元来の「公衆浴場」ではなく、「性的サービスを行う個室付浴場」として、日本の人々にイメージが浸透してしまいました。
その後、日本では「大使館」という名のトルコ風呂が登場し、業種別電話帳で「トルコ大使館」の名称で掲載され、本物のトルコ大使館から抗議されるという事態になりました。
しかし1984年には、母国名の「トルコ」が「性風俗」とイメージ付けられている事に落胆したトルコ人の学生が、業界団体に改名を求めて抗議をし東京都特殊浴場協会が、「トルコ風呂」に変わる名称を公募して、2000通以上の応募の中から、当時24歳の男性会社員の「ソープランド」の名称が採用されました。
改名当初は、まだ「ソープランド」という名称に戸惑う人が多かったようですが、今となっては、すっかりお馴染みの名前ですよね!?
性風俗店が「トルコ風呂」と呼ばれていた事に対して、さぞやトルコの人々は憤慨していることと思いきや、親日家のトルコ人は、「よくぞ改名してくれた!」と日本を賞賛する声まであったそうです。トルコ人は寛大ですね。